TALK EVENT of alterna



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オルタナ・アート・セレクションでは、各回終了後、現在活躍中のアーティスト・プロデューサーと本作の若手演出家が感想を交わすトークイベントを開催します。様々な角度から今回の作品について語っていこうと思います。「この人の思うことを聞いてみたい!」という回にぜひご来場ください。
(司会:高田ひとし)

柳沼昭徳 
烏丸ストロークロック/脚本家・演出家

6月23日(木)19:00~

空間の可能性を考える

いつまでも忘れられない作品に出会うということがあります。それはほとんど事件として体験される出来事ですが、柳沼さんが烏丸ストロークロックで作・演出した『六川の兄妹』は僕にとってまさにそういう作品でした。びっくりしちゃったわけです。(柳沼さんに直接おはなしを伺うと、どうも僕の勘違いらしいのですが)共同体がなぜ必要なのか、そしてそれはどうしたら可能なのかを証言形式で描き切り、劇構造を二転三転し観客を不気味な場所へと引き連れる……衝撃的な作品でした。そんな柳沼さんと市川くんの演劇に対する考えはかなりちがう気がする。柳沼さんが大切にするのは「人と人との関係性が織り成す場=空間」ですが、市川くんの『誰?』では俳優同士の会話で劇が起きることはなく、俳優は同じ空間を共有しながらも、それぞれが無関係な時間を生きています。この違いは一体なんなのか。そしてこの違いは何を意味するのか。この問いは演劇から世界・時代について考える上で、現在とても重要だと思うのです。演劇の空間性から、僕らの生の現在が見えてくるかもしれないと淡い期待をいだいています。

西尾孔志
映画監督/京都造形芸術大学講師

6月24日(金)19:00~

UST特別対談「西尾孔志と若いヒト キョート、エンゲキ、エイガ」

西尾さんは不思議な人です。いつのまにかそこにいるといった風情で、元はCO2という大阪の映画祭のディレクター兼映画監督のはずだったのですが、なぜか最近は演劇界隈に食い込んでいます。それはとてもいいことなのだけれど、そのバイタリティに驚かされるわけです。最近は―これもなんでかわからないのですが―大阪市立芸術創造館でUSTREAMの何かをやっているようです。何をやっているのかはあまり知りません。(その関連だと思うのですが)先日はノールスというUST番組を企画して、《宮沢章夫と若いヒト トーキョー、キョート、オオサカ》なんてやっていました。なんだかもうよくわからないけど、とにかくすごいバイタリティなわけです。それにあやかって、このトークもUST放映していただけることになりました。西尾さんの軽快なしゃべりと共に、愉快な辛口トークが繰り広げられます。

三浦基
地点代表/演出家

6月25日(土)14:00~

「いま・ここ」で何かは起こる?

地点の三浦さんは現代演劇の最も先鋭的な表現者の一人です。が、その試みを真に理解するのは難しい。多分、それは三浦さんが演劇の歴史に対してアプローチする数少ない「演出家」だからではないでしょうか。いえ、もう一つ時代的な必然性もあるかもしれません。僕たちは劇場という中心の制度を必要としていないだろう、ということです。現代という時代が近代を突き崩すことで生まれるならば、劇場という近代の制度を持たない演劇に課題はなく、また現代もないのかもしれません。市川君は「ここ」で何かが起こることを信じない、つまりは演劇の「いま・ここ」を信じない極めて現代的な感覚で演劇を作ります。一方で、地点の作品も「チェーホフ四大戯曲連続上演」以降、「ここ」で何かが起こっている感覚がどんどん消えていっている。両者とも全てコピペ可能なものとしてしかあれない時代感覚を共有しているようにも思うのですが、一方で全く全然関係ないことをしているようにも思うわけです。この距離感は一体なんなのか。「いま・ここ」で何かを起こすことの意味からその違いまで語り起こします。

上田誠
ヨーロッパ企画/脚本家・演出家・構成作家

6月25日(土)19:00~

劇団の可能性はどんなとこ?

上田さん率いるヨーロッパ企画といえば、京都で最も成功した若手劇団のひとつではないでしょうか。最近では『冬のユリゲラー』を原作にした『曲がれスプーン』(原作・脚本:上田誠)、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞した『四畳半神話大系』(脚本:上田誠)など上田さんの活躍はもとより、KBS京都で放映されている「ヨーロッパ企画の暗い旅」や毎回テーマを決めて5分間のショートムービーグランプリを決める「ショートショートムービーフェスティバル」などテレビ制作・映画祭の開催まで、その活動は多岐にわたります。「劇団」でありながらこれほどまで「劇団」の枠を超えたポテンシャルを感じさせるところはそうそういない。それは京都の若手に劇団活動の新しい可能性を見せてくれたのではないでしょうか。では、そんな上田さん率いるヨーロッパ企画が目指す先はどこなのか。従来の「劇団」に留まらない劇団を続けてきた上田さんはなぜ劇団で演劇を続けてきて、また続けていくのか。同志社大学から始まったヨーロッパ企画の道のりから、上田さんのやりたいことまで、劇団という活動の可能性を語っていただきます。

杉原邦生
KUNIO/舞台美術家・演出家

6月26日(日)14:00~

東京―京都、何かが違う、何が違う?

杉原さんといえば、「冬のサミット2008」より、東京・こまばアゴラ劇場が主催する舞台芸術フェスティバル<サミット>ディレクターを2年間務め、『エンジェルス・イン・アメリカ-第1部 至福千年紀が近づく』では京都芸術センター「舞台芸術賞2009」佳作を受賞、また昨年開催されたKYOTO EXPERIMENTではフリンジ企画「HAPPLAY♥」のコンセプターを務るなど目覚しい活躍を見せています。木ノ下歌舞伎では数々の歌舞伎作品の舞台美術・演出を手がけ2010年の『勧進帳』ではこれでもか! という手練手管に目を見張りました。そんな杉原さんの作品や「HAPPLAY♥」に呼ばれた関東圏の作品はどこか麻薬的な印象があります。観客の神経を直接的に刺激するようなグルーヴと、極めて消費的で刹那的な感覚を持ち、「演劇に閉じこもっても仕方ない」という時代感覚とともに演劇の外から様々な手法が持ち込まれます。そこには市川君の作品との共通点がある一方、やはり別の文脈を感じるわけです。この文脈の違いは、もしかしたら東京と地方(京都)の違いかもしれませんし、演劇の概念の違いなのかもしれません。とにかく何かが決定的に違い、僕はそこに興味があるのです。

村川拓也
演出家

6月26日(日)19:00~

俳優はどこに立つの?

今年の1月に開催されたC.T.T.vol90。そこに出品された村川さん演出『フジノハナ』は驚くべき作品でした。村川さんは2005年より地点の演出助手を務め、09年『建築家とアッシリアの皇帝』( 作:F・アラバール)を最後に、2010年よりフリーの演出家として活動。『小走り/声を預かる』( 引用文献:宮本常一) 他、小作品をいくつか発表。『フジノハナ』はその小作品の一つでした。そこには「俳優は労働する者である」という批評性が持ち込まれ、演劇の見方が新しく拡張される感覚を覚えたのと同時に人間の根源的な虚無性が見えた気がしたのです。人間を簡単に取り換えられる~人材とはまさにそういう意味でしょう~現代に対する演劇のクリティカルな批評性を感じたのです。さて、市川くんの作品もいかに語る言葉や観客と距離を取るかがひとつの問題になっています。つまりどういう事かといえば、村川さんも市川くんも共に「俳優」の身分がひとつ問題になると思うわけです。俳優はいかに・どうやって・そこに立つのか。それはきっと舞台芸術としての演劇の現在を浮き上がらせるはずです。

橋本裕介
KYOTO EXPERIMENTプログラム・ディレクター/プロデューサー

6月27日(月)14:00~

世界に通じる? 『どこか、いつか、だれか』

京都国際舞台芸術祭「KYOTO EXPERIMENT」。2010年から始まった舞台芸術の祭典だ。世界中から集まった最先端の作品を紹介するこのフェスティバルのプログラムディレクターを務めるのが橋本裕介さん。京都のアートの中心地、京都芸術センターでは2004年から「演劇計画」という事業をスタート。その成果が国際舞台芸術祭という形に結実したわけです。数多の舞台芸術を観てきた橋本さんのめがねに本作品は適うのかな、とこれはもう単純に思うわけです。本作が国際級のレベルに達しているかどうか、ざっくばらんに語ることができればと思います。